患者さん向けのやさしい医療情報


遊走腎



腎臓は立ち上がると約2〜3センチ下がるのが普通です。
しかし、やせた人などではもっと下がることがあり、骨盤の中まで下がる場合があります。
このような場合には
腎下垂、あるいは遊走腎(特に病気ではありません)と呼び、中には血尿や腰痛の原因となることがあります。




どんな病気?

 寝た姿勢では正常の位置にある腎臓が、立つと2椎体(ついたい)(約10cm)以上下るる状態を指します。
 本症は内臓下垂の部分症状と考えられています。


 
原因は?

 腎臓を支えている周囲の組織が弱いために生じます。
 立位では、肝臓など重量に富む臓器の荷重負荷がかかるなどのさまざまな要因から、右腎は左腎と比較して下垂しやすくなっています。
腹壁筋の発達が悪く、やせていて体脂肪の乏しい人は、簡単に腎臓は下垂する傾向にあります。
 
女性の1〜2割は遊走腎といわれ、特にやせた若い女性に多い。



症状

 立った時に腎臓の位置が下がり、血管や尿管が圧迫されます。
 立位歩行や荷重などで症状は持続または増悪します。横になるとおさまる腰痛、側腹部痛、腰背部痛を訴えることが多く、その多くは鈍痛です。

 また血尿は、腹痛と並んで遊走腎でよくみられる症状です。微鏡的血尿が主体です。肉眼的血尿がみられることもありますが、軽度です。

 尿路症状として、頻尿(ひんにょう)、残尿感、排尿痛、排尿困難、尿失禁など(尿路不定愁訴)を訴える人もいます。遊走腎による特異的症状とはいえません。
そのほか食欲不振、吐き気、下痢、便秘、胃部膨満感(ぼうまんかん)などを訴えることもあります。



検査と診断

 臥位と座位における腎臓の触診と、静脈性尿路造影が診断の中心となり、臥位と立位での腎臓の位置を比較します。



治療

 遊走腎は、原則的に保存的治療を優先します。重い病気ではなく、腎不全にはなりません。放置しても問題ありません。

 やせている人は腎周囲の脂肪を増加させ、腎臓の支持・補強を目的とする肥満療法が基本になります。
また虚脱体質、食欲不振、内臓下垂などの典型的な「虚症(きょしょう)」を示す場合には、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などの漢方製剤が用いられることもあります。

 同時に、理学療法として腹筋・背筋力強化のための運動療法を行うとともに、コルセットや腹帯などを用いて腹壁の緊張を保持します。

 遊走腎に対する単独の手術として腎固定術が行われることは、現在では極めてまれです。




     
      2007,11,02 ジャンボユズとミカン





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