患者さん向けのやさしい医療情報



        医療の崩壊へ



  ********************* 研修医&勤務医 ***************************

●医師・研修医の東京など
大都市への集中がおこり、逆に地方での極端な医師不足が生じています。
大学医局制度の事実上崩壊弊害が大きかったことも事実です)、それに頼っていた僻地医療や地方医療への医師供給システムの崩壊が2次的に起こりました。

  これらは、卒後研修制度改革が引き金になったことは事実です。しかし、奴隷医制度と揶揄されていた従来の封建的な医局制度そのものが原因です。若手医師に見放され、自壊したのです。

●一般外来医療は診療所で、入院医療や検査・高次医療・救急医療は病院で、といった
役割分担はなされず、病診連携は絵に描いた餅です。互いに競合関係であるがために、病院は無責任な長期処方で患者を囲い込んでいます。外来診療に労力をとられ、勤務医の労働環境をますます悪化させています。

   *********************** 開業医 ********************************

●政府は最近、多診療科にわたって診療ができる
かかりつけ医≫を理想とし≪総合診療科≫を提唱しています。しかし、主病名は一つ、使用可能なクスリは6剤以下などと制限しており、医療の現実と矛盾しています。リウマチ膠原病患者や老人患者は多くの病気を併発しており、どれも主病です。多種類のクスリを使わざるを得ないのです。
 これもまた単なる国民向けポーズであり、医療費削減策の一つに過ぎないのでしょうね。
●それをすすめることで、2008年導入予定の75歳以上高齢者の医療保険に
≪人頭払い制度≫の導入を考えています。
この制度では、
かかりつけ医が強制され、自由な医療機関への受診は不可能になります。最低限の医療すら十分に受けられず、難病・重病の治療は切り捨てになるでしょう。
政府の本音は、ひたすらいかに医療費を削減していくか、だけなのですね!

●今、厚労省の新たな動きとして、
開業医へ救急医療を押しつけようとしています。
 医療訴訟が頻発しております。患者の要求はエスカレートするばかりです。聴診器一つで患者が満足できる救急医療は提供できません。もし重病で緊急検査や緊急入院が必要と判断しても、後方支援病院も荒廃している現状では、転送も困難です。
 
救急医療に手を出せば、経営的赤字増加や訴訟リスクはまぬがれません。それらが解決されないかぎり、どの医療機関も救急医療の引き受けは困難でしょう。
 
時間外診療では、人手も薬もなく、経営的赤字をまねき、危険ばかりが大きくなります。
厚労省は、その財源として、極限にまで下がった定時診療報酬を更に削減しようとしています。救急医療の名のもとに、開業医へ多大な犠牲をも強要しようと画策しているのです。

  ************************ ハイリスク診療 **************************

●選挙目当ての
≪小児医療無料制度≫が、不必要な時間外受診や傍若無人な受診マナーを招いています。小児科医療を地獄環境へと追い落としているのです。ますます小児科医が医療現場から逃散していく結果となっています。

●世界的にみても珍しい、
前時代的な助産師制度が残っているが為に、医師監視下での看護師内診行為までも禁止しました。さらに助産所のリスクを産科医に転嫁しようとする動きすらあります。
 
産科医療破綻を決定づけたのは、産科医療現場の窮状を無視し、助産師側の利益に配慮した、厚労省の≪最近の通達≫でしょう。

  ************************ 医療経営 *******************************

診療報酬の度重なる削減と(薬や医療材料、建物設備の維持管理費にかかる)消費税の病院負担増加によって、医療経営はさらに厳しく深刻化しています。追い打ちをかけるように、厚労省内では、国民医療を下支えしている開業医を潰そうという政策がささやかれているそうです。
●患者側にとって、はるかに親切で便利で安価な
≪院内調剤≫が既に立ちいかなくなりました。院内薬剤師がいても技術料がつかないのです。クスリの消費税負担で赤字になります。
(院内にはクスリがありません。結果として救急受け入れは難しく、災害時医療も困難となることでしょう。) これも
患者の便宜を犠牲にして、負担増しを強いた、ムダな医療政策の一つです。

●IT産業とつるんだ政策として、2010年度?から
インターネット(電子媒体)での診療報酬請求を強制しようとしています。
 関連機器や必要事務人件費費など新たに必要な経費は、
数百万円に上がるだろうと言われています。そのすべてを医療機関に負担させようとしているのです。対応できない零細医療機関や医師は閉院し引退せよ、との悪代官さながらの仕打ちです。
(あえて強制するのなら、せめて初期費用、メンテナンス費用、必要人件費の全てを国や保険者がもつべきです。)

 医療保険業界やIT家電業界など
営利企業が虎視眈々と医療参入をもくろんでいます。利益追求だけが目的のハゲタカ経済界(政商)にひきずられるすさまじい医療破壊政策によるものでもあります。
 医療・福祉に営利企業の参入を推奨した結果はどうでしょうか? 当初から危惧されたように大失敗です。 
コムスン始め、福祉を食い物にする営利企業の不正の実体
が明らかになってきました。

  ************************ 自己防衛的医療 *************************

●司法・マスコミなどの無責任な医者たたき、医療訴訟の頻発や受診マナーの低下による
萎縮診療や自己防衛医療への傾倒、医療従事者側モチベーションの急激な低下も起こっています。

 医師の診療報酬は切り下げられ続けるなかで、医師としての倫理観のみで、誠心誠意医療に尽くしても、それを当然視され、感謝されないどころか、患者の要求は高くなるばかりです。

 結果が悪ければ過失致死罪や過失傷害罪に問われかねません。
 
結果が罪に問われるようなら、少しでもリスクのある医療行為は敬遠されるでしょう。
 ≪よきサマリア人の法律≫
をつくるべきです。
 
医師は神様ではありません。最高の名医でもかなりの確率で誤診します。誤診は罪だと言われれば、医療は成り立ちません。人間は死んでいく動物です。本来病気や事故で死んでいたケースであるのに、ただ今回は助けられなかっただけです。殺人罪や傷害罪にあたるはずがありません。
 昨今の司法検察側の摘発方針、医療供給に対する刑法・民法など一連の法体系不備の露呈、それらをさらに煽るマスコミ、正義の仮面をかぶった弁護士やエセ人権団体、
など等の医療をさらに荒廃させる諸要因も、一気に露呈してきました。


  ************************ 現場からの逃散 **************************

 これらの諸々悪条件がかさなって、
 危険で労働環境・待遇が劣悪な
国公立病院から、全国的な規模で、医師の≪逃散≫(辞職立ち去り型サボタージュとも言われる)の雪崩現象が誘発されました。
 さりとて
開業するは地獄、されど残留するはさらに地獄、医師は逃げ場がない状況に陥っています。小児科・産科・外科系診療科など、リスクの大きい診療科への新規希望者は激減し、現役専門科医のリタイア現象なども全国的規模で起こっています。


  ************************ 医療政策 ********************************

 
医療供給体制の危機的状況をまねいているのですが、政府もマスコミは、医師を非難するばかりです。医療体制の根本的なこれら問題点は、無視され続けています。 
 国会答弁などを聞いていても、
政府や厚労省は、(及びマスコミ関係者も)故意に、医療現場の窮状、医療供給体制の惨状を無視し、医療崩壊へ追い打ちをかけるような医療費削減キャンペーンを流し続けているとしか思えません。

 危機を招いている根本原因は、
自民党政府が策定した低医療費政策・医療費総枠の削減策です。低医療費、医療費削減方針を速やかに中止して、新基準にそくした必要医療費を算定して、総医療費枠を拡大するべしで、財源はあります。それなくしては、いかなる策を弄しても、医療危機を回避する手だてはありません。

 過労死や、疲労による医療ミスを起したり、燃え尽き症候群をきたして当然なぼど苛酷な医師の労働環境を無視してきた厚生労働省や病院管理者側の危機管理意識の欠如によるものでもあります。


 現在進行しつつあるの医療危機は深刻です。しかし、ある一面では、当然の結果でもあります。正常な状態に正す絶好の機会到来でもまたありましょう。

      2007.4.20初稿


    
        ≪人頭払い≫と≪かかりつけ医≫   
        開業医へ救急医療を押しつけ
        救急医療の回避、よきサマリア人の法律
        産科医療の崩壊と助産師制度、≪最近の通達≫
        インターネット(電子媒体)での診療報酬請求を強制
        院内調剤の破綻、医療経営の深刻化
        病診連携は絵に描いた餅
        医師の不足と偏在、地方の医師不足
        大学医局制度の崩壊と地域医療医師供給システムの崩壊
        小児医療無料化政策と小児医療現場の地獄絵図
        全国規模で医師の逃散現象  月刊保団連2006,6より
        医療費総枠拡大のための財源はあるの?
        日本の医療費は本当に高いの?     

     ≪姨捨山医療制度≫2008年4月1日導入される

         外来主治医と後期高齢者医療制度
         (マンガ)後期高齢者医療の撤廃を!

     国民が安心できる医療を目指して:表紙と参加団体【小冊子】
        世界が手本にする日本の医療
        お年寄りが行き場を失おうとしています
        医療機関の人手不足が深刻化しています
        医療における格差が広がりつつあります
        日本の医療費は決して高くありません
        日本の医療を守るために、今こそ声を上げなければなりません
     医療崩壊をくいとめよ、年金問題より医師確保を
     モンスター患者・医師の専門性の軽視・治療の規格化 
(2008,8,23,岐阜新聞)
     医療経営の内情




  
    
花梨 2007,4,18




inserted by FC2 system