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不満募り次々退職

写真:写真説明
内科常勤医全員の退職を発表する成東病院の坂本院長(左)=2月24日
 「自分もいつ病気になるか分からない。近くにある成東病院の内科に入院できないのは本当に困る。1日も早く再開してほしい」

 国保成東病院の北棟4階の内科病棟で3月31日、入院中の患者を見舞った家族は訴えた。病棟の別の場所では、看護師がベッドをふき清めては、空いた病室に運び入れていた。

 内科常勤医と泌尿器科の医師全員が退職し、新たな入院患者は受け入れず、山武地域の内科の2次救急輪番制からも撤退――。今年2月、成東病院が会見で発表した内容は、県内の医療関係者に衝撃を与えた。同月に87%だった同病院の病室稼働率は、3月からは80%前後に下がる見通しだ。

 「救急医療に尽力してきたが臨床研修の必修化で医師が減り、これ以上続けると事故を起こすか、医師が健康を損なうというところまで追い込まれた」。坂本昭雄院長は会見で苦渋の表情を浮かべた。

 騒動の引き金は、内科常勤医9人中2人が開業のため退職を申し出たことだった。千葉大から派遣されている医師2人が4月に異動して後任も来ないため、残るのは5人。「9人でもきつい仕事を5人でできるはずがない」。内科の医師は次々に退職を決めた。

 ただ、ある内科の医師は、「それはきっかけにすぎない。内科では数年前から不満が募っていた」と打ち明ける。

 山武地域には、ほかに県立東金病院、国保大網病院などがある。かつて、地域医療の中心は東金病院だった。しかし、2004年に始まった臨床研修必修化の影響などで、同病院の常勤内科医は10人から昨年10月には4人にまで減り、一般病床数も179床から110床に縮小。2次救急の輪番制度の担当日も減った。

 成東病院の内科医は、「東金が減らした入院患者や輪番制の当番などの多くは成東が引き受けた。うちも医者は減っているのにどうして、とみんな思っていた」と話す。

 「現場は東金病院のすぐ近くなのに、なんでうちの病院に来るんだ」。3月半ばの夜、山武郡市広域行政組合の救急車が、火事でのどなどを痛めた主婦を30分以上かけて圏域外のある病院に運び込んだ。当直医が聞くと、消防側は、圏域内の5病院に連絡したが断られたと説明したという。

 「以前は、東金が受けなくても成東が受けてくれた。今後はますます、山武地域からの救急患者が増えるかもしれない」。この病院の当直医は懸念する。

 「ぎりぎりの医師数でようやく地域医療が続けられているところに、1病院でも問題が起きれば、影響はすぐ広がり、『ドミノ倒し』が起きてしまう。手遅れになる前になんとかしなければ」。日本病院会副会長も務める村上信乃・旭中央病院前院長は訴える。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/chiba/kikaku/103/2.htm


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