患者さん向けのやさしい医療情報


 悪魔の病気:慢性痛

 

 痛みの治療を専門にしている医療機関では、ほとんどの患者さんは治療により順調に軽快し、しばらくすると来院されなくなります。
 しかし、残り10%程度の方が治療に抵抗して残っていきます。いわゆる慢性痛です。いつの間にか外来が慢性痛患者さんであふれるようになります。

 治らない、治りきらない、治療に難渋する、できれば避けて通りたい患者群です。しかし、極めて重要な疾患群でもあります。


痛みとは?何でしょう?

 痛みは、その人だけの意識の中身であり、他人からは決して感じることができません。患者さんが痛いと言えば痛い、という認識が大事です。

ただ難しいのは、うその痛みや、精神病的な痛みもまぎれていることです。習慣性の痛み、慢性病による痛みなども含まれます。原因が特定できない場合、気のせいだと無視されてしまう危険性もあります。

 

痛みが悪魔へ変身する?

 痛みは、体の異常を知らせ、体を防御するための警報装置です。どうしても必要な物ではありません。痛みを起こすほど強い神経の興奮は、体にとって何も利益がありません。

 痛みの刺激は自律神経に影響して血液循環を悪化させます。痛みを引き起こす化学物質を増加させ、さらに痛みを増強させ、悪循環を形成します。

 全身的にも、自律神経を異常に緊張させ、精神的な苦痛やストレスを引き起します。

 人体は本来強い自然治癒力をもっており、ほとんどの場合、悪循環はどこかで断たれ、消失します。問題なのは、悪循環が高じて、早期に回復せず、慢性痛へ移行した場合です。この痛みは邪悪な悪魔へと変身するのです。


慢性痛の特徴

(1)痛みの強さと病気の程度・進行度とは比例しません。

(2)いわゆる自律神経失調状態となり、食欲不振、活力低下、睡眠障害、慢性疲労、などの不定愁訴が多くなります。

(3)気分は沈み、自律神経失調状況が悪循環し鬱病状態を悪化させます。痛みに神経を集中させて益々痛みを尖鋭化させていきます。
 精神的に追い込まれ人格が破綻してしまうケースも珍しくありません。

 

慢性痛を来すありふれた病気

(1)頸肩腕症候群:肩こりの程度から、嘔気やめまい・激痛を伴う神経痛の状態までさまざまです。

2)四十肩・五十肩:拘縮した肩は半年も一年も不便さと疼痛で苦しむことになります。早く痛みを除き、拘縮の予防が大事です。

(3)肩手症候群:心筋梗塞や脳梗塞の後遺症として発症します。異常な自律神経反射による神経や筋肉の循環不全が原因です。肩手指の激痛・浮腫を特徴とします。

(4)慢性腰背痛:なんとか仕事ができる程度から、体動や安眠も困難な程度までさまざまです。

(5)慢性関節痛:半月板損傷、靭帯損傷、変形症、リウマチ、痛風、偽痛風など原因もさまざまです。

(6)骨粗鬆症:骨量の減少により、背骨や関節・筋肉・靭帯への負担が増し、また変形や骨折などが原因で体のあちこちで頑固に痛みがくりかえします。

 

慢性痛の対策と治療?

決定的な方法はありません。神経ブロック、関節注射、内服薬や外用薬、温熱療法や運動療法、はては精神療法から東洋医学まで組み合わせていきます。

 最も大切なのは、予防です。急性痛の間に疼痛治療を徹底的に実施し、慢性痛への移行を食い止めねばなりません。

 不幸にして慢性痛が完成された場合、治療は困難を極めます。人体の残された自然治癒力を引き出すために、ありとあらゆる方法を動員して治療に当たることになります。

 治療は長時間を要します。また例え一時的でも、痛みを緩和する努力を常に怠らないことも大事です。

 生活の質の維持改善に努めます。痛みと共に生きていく、いえ、痛みを従えて生きていく、そのわずかな心境の変化こそ、心理的なゆとりとなって状況を好転させます。

 治療の全課程において、常に心の支えとなり、身体の杖になってあげるのが、我々医療者の役割であろうと思っています。

 



  以上の文は、最近当地の広域連合広報誌に載せたものです。  3/30.2010





    
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